中国は変わるか。

中国から、ありもしない「領土問題」を吹っ掛けられ、ずいぶんと苦しんできた日本ですが、中国は東南アジアの他の国々にも横暴に振る舞い、南シナ海の島を軍事力で押さえてきました。

これに、仲裁裁判所が毅然とした裁定を下したことで、中国の国際的威信は大いに傷つけられたようです。

今のところ、中国は裁定に猛反発していますが、日本の友人である米国や東南アジア諸国など、多くの国が中国をたしなめる側に回っています。

これで中国が反省し、平和で、融和的に周辺国と協調する道を選んでくれればいいのですが。

とにもかくにも、今年、特に6月以降、世界の枠組みが激変するようなことが続いています。中国もまた、素晴らしい方向に変化し、地域の平和と発展に資する国になってくれるよう、心から祈りたいと思います。



■南シナ海仲裁裁判で敗訴の中国、米国に矛先

中国が最も恐れていた屈辱的な結果だった

【上海】中国が最も恐れていた屈辱的な結果だった。小国フィリピンがアジア太平洋地域の覇権国になる野望を持つ中国を徹底的に打ち負かす判決が国際仲裁裁判所から下ったためだ。中国政府は引き下がるわけにはいかない。

 判決は明白かつ全員一致で、歴史的に南シナ海の大部分に主権が及ぶという中国の主張をはねつけた。中国が珊瑚礁の周囲を埋め立てて人工島を造成したことを強く非難し、中国に威嚇されていたフィリピンの漁師の主張を支持したことで、中国政府が唱える正当性は危うくなった。

 中国政府は、ナショナリスティックな国民の反応に加え、「オランダ・ハーグにある国際仲裁裁判所の判事らは、中国の台頭抑止を謀る米国の手先になっている」との確信を背景に対応していくだろう。中国は次に怒りの矛先を米国に向けることになる。中国の英字紙「チャイナ・デイリー」は12日、「米政府演出の茶番」と論評。新華社も「外部により念入りに演出された茶番だ」と同様な記事を配信した。

 緊張が急速にエスカレートしている状況では、差し迫った危機は、判断ミスや事故を引き金に中国と米国が紛争にもつれ込む可能性があることだ。

判決に先立ち、中国による国際仲裁裁判所の非難が最高潮に達する中、中国は実効支配しているパラセル(中国名:西沙)諸島の沖合で実弾演習を実施。習近平国家主席は「中国は騒ぎになることは恐れない」と述べていた。先に同海域には米軍が空母打撃群を派遣していた。

 地図で見ると、仲裁裁判所が今回無効判断を下した「九段線」は、中国南部の海岸から南方に垂れる牛の舌のような形をしており、南シナ海のほぼ全域がこの中に入る。中国国民の目から見れば、国威発揚を示し誇りに思えるものだ。中国政府が発行したパスポートにはこの線が記されている。同じく人工島も中国復興の代表的な象徴となった。

 かつて帝国主義の犠牲になったことを引き合いに出して国際法に訴えることが多い中国にとって、今回の判決は法律上だけでなく道徳上の難題でもある。中国の王毅外相は2年前、国際連合(UN)の会合で「強者がやりたいように振る舞い、弱者が痛手を負うような無法地帯の法律は拒否すべきだ」と訴えた。

 中国が今後、埋め立てによる造成で地域の地理にさらに手を加え、係争中の他の領土でも領有権を主張したり、さらには南シナ海上空に領空を設定したりすることはいずれも考えられる。そうなれば中国は、違法行為に出たと世界の大方からみなされるだろう。

 南シナ海で生じている不穏さの背景には中国の相反する2つの優先課題がある。ひとつは強大国として「平和的に台頭」するという長きにわたって表明されてきた切なる願い。もうひとつは、かつては自分たちのものだったと中国がみなしている領地のすべてと、「近海」の管轄権を取り戻すという大いなる決意だ。これはつまり、米軍をこの海域から押し出すことを意味する。

 この著しい矛盾を反映するかのように、アジアの近隣諸国に対する中国のアプローチの仕方は積極的な友好姿勢と、けんか腰の間で揺れ動いてきた。

 東南アジアの政府関係者たちはいまだに、2010年にベトナムのハノイで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムで中国の楊潔チ外相(当時)が発した言葉と身振りに憤慨している。楊氏はシンガポールの代表団をにらみつけると、人差し指を振りながらこう宣言したのだ。「中国は大国であり、他の国は小国だ。それが事実だ」

仮に中国が、フィリピンや他の沿岸諸国が新たな地域の覇者に単純に従い、中国を頂点とするヒエラルキーの中で自国の立場を受け入れると期待したのであれば、彼らは誤りに気付かされたはずだ。米国の後押しを得てフィリピンが抵抗することを決めたことは中国を激怒させた。

 数日前、戴秉国・元外務次官はフィリピンに対し、さらなる挑発は避けるようにと警告を発し、「そうでなければ、中国は黙って座ってはいない」と述べた。

 だが、フィリピンの記念すべき勝利に触発され、南シナ海で領有権を主張する国・地域のなかから同様に法的判断を仰ごうとする動きがひとつならず出る可能性はある。なかで、最も追随しそうな国はベトナムだ。

 中国指導部は自らを窮地に陥れている。彼らは東アジアで優位に立っていた古代の中国の立場を回復させるというビジョンと、土地を取り戻すことを関連づけてきた。すなわち、南シナ海のちっぽけなサンゴ礁であり、日本や台湾と領有権を巡って反目している東シナ海の岩礁である。本土から離れている領地として、飛び抜けて重要な場所だ。これは習氏が思い描く「チャイナドリーム」の心理的な中核部分だ。

 中国が国家の威信をかけてこの夢を追い求めるなかでとっている行為は、地域の不安をかき立て、軍拡を助長し、中国の領有権への野心に対抗するための小国同士の連携を生んできた。

 浚渫(しゅんせつ)工事で造成された人工島は限られた軍事施設しかもたない。いざ対立が起これば、ミサイルの集中砲火で即時に海の藻くずと消えるだろう(超大型台風でも同じような効果があるかもしれない)。

だが重要なのは、アジアにおける米国の優位性に挑戦するという中国の決意を表すものとしては高くついているということだ。

 中国にとって今が過去を清算するときだ。最終的に中国は地域の平穏と国家的野心のどちらをとるか、決断を下さねばならない。中国の台頭は近隣諸国の領有権の犠牲のもとによってのみ実現するという、中国のこの攻撃性の強い姿勢は法という障害にぶち当たった。

 中国が手に入れられるのは地域の安定性か、失地回復の夢のどちらかだ。両方は無理である。

(筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト)